やさしい税務会計ニュース
文書作成日:2024/12/03
令和7年度分の個人住民税に係る定額減税とふるさと納税への影響

[相談]

 私は毎年、ふるさと納税を行っています。
 聞くところによると、個人住民税の定額減税額のうち一部の金額については、今年度(令和6年度)ではなく来年度(令和7年度)に実施されるそうですが、それはどのような人が対象なのでしょうか。
 また、令和7年度分の個人住民税について定額減税を受ける人について、その定額減税額はふるさと納税の控除額の上限額(いわゆる、限度額)に影響を及ぼすのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の内容のうち、定額減税額はふるさと納税の限度額には影響を及ぼさないこととされています。そのほか、令和7年度の個人住民税の定額減税の対象者などの詳細は、下記解説をご参照ください。

[解説]

1.令和6年度分の個人住民税の定額減税の概要

 令和6年度分の個人住民税については、納税義務者(本人)、控除対象配偶者及び扶養親族1人につき1万円を乗じた金額が、個人住民税の所得割額から控除されています。

 ただし、「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者を有する人」については、定額減税額のうち、その「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」に係る定額減税額(1万円)について、令和6年度分の個人住民税ではなく、令和7年度分の個人住民税から控除されることとされています。

2.「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者を有する人」とは

 上記1.の「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者を有する人」とは、具体的には、下記@およびAの両方の要件を満たす人をいいます。

  • @個人住民税の納税義務者(本人)の令和6年分の合計所得金額が1,000万円超1,805万円以下(※1)であり、個人住民税の所得割が課税されること
  • A上記@の人が、その人と生計を一にする配偶者を有しており、その配偶者の前年中の合計所得金額が48万円以下(※2)であること

※1 所得が給与所得のみである場合、原則として、給与収入1,195万円超2,000万円以下である人が、合計所得金額1,000万円超1,805万円以下となります。

※2 所得が給与所得のみである場合、給与収入103万円以下である人が、合計所得金額48万円以下となります。

3.ふるさと納税を行った場合の効果

 ふるさと納税を行った場合、所得税については、その寄附金額のうち自己負担額2,000円を除いた全額が所得から控除(所得控除)され、その結果、所得税(復興特別所得税を含みます)が軽減されます。また、個人住民税については、一定額が個人住民税から控除(税額控除)されることとなります(※3)。

 なお、上記の寄附金控除等を受けるためには、原則として、ふるさと納税を行った年の翌年の3月15日までに、所轄税務署へ確定申告を行う必要があります(※4)。

※3 ただし、税額控除されるふるさと納税額には年間の控除上限額(いわゆる、限度額)があり、その限度額を超えた金額については、控除の対象とはなりません。

※4 確定申告をする必要のない給与所得者等がふるさと納税を行う場合には、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」により、確定申告を行わなくても寄附金控除を受けられる場合があります。

4.ふるさと納税の控除額の計算方法の概要

 ふるさと納税の控除額の計算の概要は、次のとおりです。

@所得税

(ふるさと納税額−2,000円)を所得控除(寄附金控除)
(所得控除額×所得税率(0%から45%が軽減(注)))
所得控除の対象となる寄附金の額は、総所得金額等の40%が上限です。

A個人住民税(基本分)

(ふるさと納税額−2,000円)×10%を税額控除

B個人住民税(特例分)

(ふるさと納税額−2,000円)×(100%−10%(基本分)−所得税率(0%から45%(注)))

 上記@およびAにより控除できなかった額を、Bにより全額控除(所得割額の20%を限度)します。

(注)平成25年分から令和19年分については、所得税率が0%である場合を除き、復興特別所得税を加算した率となります。

5.定額減税によるふるさと納税の限度額への影響の有無

 総務省によれば、令和6年度分個人住民税におけるふるさと納税の「限度額」の計算の基礎となる金額については、その金額を定額減税「後」の所得割額の2割とすると、ふるさと納税の限度額が引き下がり、令和5年中にすでにふるさと納税を行った人に意図せざる不利益が生じる可能性があることから、地方税法において定額減税「前」の所得割額の2割とする特例が設けられています。

 また、令和7年度分の個人住民税については、上記の特例は設けられていないものの、ふるさと納税に関する地方税法の各種規定により、令和6年度分と同様の取扱いとなることとされています。

 したがって、令和7年度分のふるさと納税の限度額についても、定額減税を適用する前の個人住民税所得割額がその算定の基礎となることから、定額減税の適用はふるさと納税の限度額には影響を及ぼさないこととなります。

[参考]
所法78、地方税法37の2、314の7、附則5の8、5の12、7、7の2、総務省「個人住民税の定額減税に係るQ&A集(令和6年10月21日改訂)(第3版)」など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
戻る



勤務先から住宅ローンの利子補給金を支給される場合の注意点2024/11/26
勤務先からの借入金は住宅ローン控除制度における住宅借入金等に該当するのか2024/11/19
住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ措置とは2024/11/12
法人における基準期間の課税売上高の算出ルールと消費税の納税義務2024/11/05
インボイス制度〜法人は2割特例をいつまで適用できるのか2024/10/29
インボイス制度〜個人事業者は2割特例をいつまで適用できるのか2024/10/22
令和6年の定額減税における「調整給付」と所得税2024/10/15
会社が解散した場合の事業年度の取扱いと諸費用2024/10/08
会社が地方公共団体に対して現物資産を寄附した場合の法人税法上の取扱い2024/10/01
中小企業倒産防止共済契約を解除後に再加入した場合における掛金損金算入制度の改正2024/09/24
教育資金の非課税の特例を受けていた場合の相続財産への加算2024/09/17
退職者から法定付与日数を超える有休買取と所得税の所得区分2024/09/10
放課後等デイサービスと学童保育に係る収入の消費税法上の取扱い2024/09/03
年金所得者に係る確定申告不要制度と定額減税との関係2024/08/27
宅地建物取引業者が自社用建物を購入した場合におけるインボイス制度の留意点2024/08/20
郵便切手の譲渡と消費税2024/08/13
定額減税の所得制限額を超える人に対する年調減税2024/08/06
新幹線通勤の場合の非課税とされる通勤手当の範囲2024/07/30
古物商が一般消費者から商品を仕入れた場合のインボイス制度上の帳簿記載事項2024/07/23
定額減税〜所得税と個人住民税、扶養親族の判定時期の違い〜2024/07/16
印紙税における「売上代金」とは2024/07/09
定額減税により源泉所得税の納付額が0円となった場合2024/07/02
個人事業主と所得税の定額減税2024/06/25
定額減税によるふるさと納税控除額への影響の有無2024/06/18
給与年収が2,000万円を超えていても定額減税が受けられる場合2024/06/11